佐藤征也氏を技術顧問としてお迎えし、新潟に研究拠点を構えてから、少しずつですが研究の成果が「形」になってきています。
今回は、その研究内容をまとめたポスターが完成したので、紹介させてください。
苔にウイルスを吸着・除菌する力があるのか、を検証しています

研究のテーマは、「苔がウイルスを吸着・抑制できるのか」という検証です。
対象となっているのは、日本にも約3,000種が生息するといわれる苔の中から、ラコミトリウム・カネッセンス(Racomitrium canescens)という種類。この苔が、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(COVID-19)に対してどれほどの吸着効果を持つかを、複数の実験で検証しています。
実験は大きく2種類で、ひとつは苔フィルターを通してウイルスを噴霧するテスト、もうひとつは苔を水溶液に入れてウイルスを吸着させるテストです。結果として、苔はスプレー状態でも水中でも、ウイルスを吸着することが確認されています。
この仕組みのカギとなるのが、苔の細胞壁にある「マンノース結合型レクチン構造」。ウイルスの表面にある糖鎖がそこに結合することで、吸着が起きると考えられています。
また、ナタマメ由来のレクチン「ConA(コンカナバリンA)」がコロナウイルスやインフルエンザウイルスの増殖を直接抑制するという実験結果も報告されています。植物レクチンが持つウイルス防御の可能性を、データで示している内容です。
この研究は、佐藤氏が進める共同研究の一環です。佐藤氏はポーランドのワルシャワ生命科学大学に所属する植物生理学の専門家、ハゼム・M・カラジ教授(Prof. Hazem M. Kalaji)とともに研究を進めており、今回のポスターもその成果のひとつ。
両者が連名で発表した論文が『The Bryological Times』(2024年)に掲載されています。
カラジ教授は世界で最も論文が引用される研究者のトップ1%に名を連ねる方で、植物由来の抗ウイルス技術などで日本国内の特許も取得されています。
「目に見えない力」に惹かれる

苔って、これまでそんなに意識して見たことがありませんでした。ただただ、地面や石の上に張り付いている緑の草、くらいの感覚です。
でも実際にポスターを見ると、苔の細胞がウイルスの糖鎖を引き寄せて吸着するという、かなり精密な仕組みがあることがわかります。自然の中にすでに備わっている力の豊かさに、素直に驚きました。植物って、ただそこにあるだけじゃないんだな、と。
長い時間をかけて、ちゃんと環境に適応した機能を持っている。それが研究によって少しずつ解き明かされていくのは、なんだか面白いなと思います。
今回のポスターは、佐藤氏の研究結果の文章・資料をもとに、LAKAのデザイナーが制作しています。
デザインやWEB制作に関わる立場として、「どう伝えるか」はいつも気になるテーマです。データや図表があっても、見せ方って大切で、雑だとちゃんと伝わらない。
内容と見た目、両方が揃ってはじめて「届く」ものになるんだな、とあらためて感じています。
そして完成したポスターは今、額縁に入れて研究室に飾られています。新潟のラボの共有スペースにも掲示していて、研究の場に自分たちがつくったものが置かれているというのは、なんだか不思議な感覚でもあり、素直に嬉しいなと思っています。
研究は、じっくり積み上げていくものだと実感しています
新潟に研究拠点を設けてから、構想が少しずつ実体を持ち始めている感覚があります。
今回のポスターもその途中経過のひとつですが、こうして形になるたびに、地道な積み上げの大切さを感じます。
自然の中にある、まだ気づかれていない可能性を掘り起こしていく。地味な作業だけど、どこかわくわくするものがある。そう思いながら、これからも少しずつ前進していきます。

